電脳経済学v8> f用語集> b-p 生の権力(Bio-power) (⇒foc フーコー
(当初作成:2019/08/17)(一部追加2.(3)-2:2019/09/04)

1.梗 概:
(1)生の権力生権力とも言う)は、フランスの哲学者 ミシェル・フーコー(1926-1984) によって提唱された独自の権力概念です。本ページは「生の権力」を”肯定的且つ発展的”に敷衍するものです。
(2)既述のfocフーコーに加えて、フーコー三角形の考え方を紹介します。それは真理・規範・主体を頂点とする三角座標を指します。彼は「権力」を社会規範に位置づけて西洋近代を批判しました。
(3)フーコーの権力論は、死の権力から
生の権力への移行が近代化だとしても、生の権力は巧妙に「管理社会化」を目指すもので、これでは真の自由は得られないとする主張です。
(4)この「生の権力」は生物政治学や身体管理と密接に絡みます。Bio-は生物系を指し、Bio-powerは生物機序を意味します。端的には”教育による規格化”を通して社会秩序の維持を図る考え方です。
(5)フーコーは屡々マルクス批判の立場から取り上げられます。フーコーによれば資本家vs労働者の構図が管理者vs被管理者となっても権力vs被権力の社会関係は同じ、となります。ところが、民主主義の下では管理者は被管理者から選挙で選ばれます。
(6
ここで論点を集約すれば「ka9管理」をどう捉えるかです。管理とは系を好ましい状態に保つことです。好ましい状態は多数決により定められるので何ら不都合はありません。
(7)上述(2)の規範と主体を結合させるのは「etc倫理」です。自己の解放は社会の問題とは別です。この辺りの整理は個人の(思想や信念体系上の)問題で、如何なる権力も管理も力が及びません。好ましい状態とは理想や幸福を指すのでその人次第です。

2.補完と考察:
(1)フーコー哲学は広範多岐に亘りその全貌を掴むことは研究者といえども容易ではありません。ましてや筆者のような凡才はその一部に対して勝手な解釈を加えるのが精一杯です。
(2)と言う次第で、本サイトの要諦は次節(3)の一行に尽きます。
(3)死の権力から生の権力への具体例として「暴力管理の性格移行」があります。つまり、軍隊の目的は戦争遂行から平和維持へと既に変革しています。この事実認識は極めて重大です。

(3)-2 軍隊と言えば多くの人が帝国主義時代の軍隊を思い描いています。しかしながら、現在における軍隊の社会的な位置づけや存在意義は既に劇的に変わっています。(追加:2019/09/04)
(4)畢竟、フーコーは「社会は生命系/進化系に準拠して編成されるべき」と告げている。(atpオートポイエーシス参照) 更に言えば、社会は第二のnt自然であり、人間は自然を知ることはできても編成はできない。(オートポイエーシスとの絡みは次ページ末尾を参照下さい。廣瀬浩司:授業資料格納所(追加:2019/08/25))

3.参考資料:
(1) 「生権力」 池田 光穂
(2) 「生権力と死の思想」 金森 修
(3) 『フーコー』 ガリー・ガッティング 著 , 井原 健一郎 訳 , 神崎 繁解説 岩波書店

(4) 『権力論』 杉田 敦 岩波書店
(5) 『フーコーの権力論と自由論』その政治哲学的構成 関 良徳 勁草書房
(6) 『ミシェル・フーコーの思考体系』 山本 哲士 文化科学高等研究所
(7) 『権力の読みかた』-状況と理論- 萱野 稔人 青土社
(8) 「生の権力と新たなる生の形式の発明」 廣瀬 浩司