電脳経済学v6> f用語集> ctg 範疇=カテゴリー(category) (当初作成:2011/04/29)(一部修正:2011/07/24

1.梗 概:
<1> 同じような性質のものが含まれる範囲。(趣味の範疇を出ない。)
<2> 同じ種類のもの
所属する部類・部門。ジャンルあるいは系ともいう。(生物や鉱物など)
<
> 個々の科学で基礎となる観念。そこでの因果律や関係性など。(数学の数、心理学の心など)
<
>存在のもっとも基本的な概念。
 @アリストテレス:これを存在の基本的な在り方と考える。最高類概念ともいい
実体・量・質・関係・場所・時間・位置・状態・能動・受動からなる10項目。
 Aカント:悟性の先天的形式
でこれにより対象を認識へと構成する。量・質・関係・様相からなる4項12目。
 B 弁証法的唯物論:物質とその存在形態である運動、時間、空間など
基本的範疇とする。
<5>ギリシア語のkategoreinに由来する述語の意。述語は主語の動作・状態・性質などを叙述するので述語論理では述語の内部構造に立ち入って推論を形式化する。現代の述語論理は言語や認識のみならず哲学の全領域を対象に分析哲学として展開されている。因みに命題論理は述語論理に比較してより古典的で基本的な論理といえる。

2.考 察:
(1) 範疇の用語法を巡る展開経路について考察を加える。その大筋は1.梗概に示す通りである。つまり世界を筋道立てて記述しようとすれば分類ないし枠組みが必要になる。たとえば検索サイトのディレクトリはカテゴリー別に区分されている。さもないと目的のコンテンツに辿り着けない。何らかの体系化や共通化がないとこの世界における相互の意志疎通や各自の認識は成り立たない。範疇はこの体系化に大枠を与える。
(2) あらゆる事象をそれ以上に分類できないところで包括する基本概念として1.梗概<4>ではアリストテレスとカントの例を挙げた。そのほかプラトン、デカルト、ヘーゲル、フィヒテ、ウィトゲンシュタイン、ホワイトヘッドなど多くの哲学者はそれぞれ範疇を提示している。つまり思考の枠組みあるいは思惟の形式としての範疇の設定なしに主張の展開はあり得ない。なお本サイトは大筋でB
弁証法的唯物論に沿いその詳細は3.結論に示す通りである。
(3) これまでに述べた範疇問題は1.梗概<5>に集約され、ここは述語論理を意味する。結論的にこれは「神我系」の系に相当する。系とは科学でありかつ述語論理と同義となる。なぜなら科学が普遍的な真理を目指すならば相応の客観的な説得力が要求される。つまり述語論理は反証に対して開かれた暫定的仮説として「反証可能性」が担保される。これは諸学を巡る哲学の立ち位置の相対化ないし触媒化といえる。

3.結 論
本サイトにおける範疇はspt時空1.<2>に示す「時間」「空間」「主体」の三者である。三者関係は図spt-1単位円により定式化される。脳内宇宙では光速の制約がないので時空長は零も虚数も取り得る。これを逆にいえば量子脳理論はこの文脈からの構築が要請される。ここで主体/認識は時空/進化文脈のアーカイブ(履歴圧縮体)と考える。

4.確 認:
最後にカントとの絡みについて確認したい。彼はその主著『純粋理性批判』冒頭で「空間」と「時間」を取り上げ、次に「カテゴリー」について述べている。前者は直観的感性により入力されそれは後者により純粋悟性概念として一次加工される。前者は下記(3)p27によれば ”事物対象を巡る「外感」の受け取りは「空間」という基本形式をもち、内的状態を巡る「内感」の受け取りは「時間」という基本形式をもつ” とある。 一方、本サイトの主張は簡明で「主体は時間と空間を統合する」となる。主体の内実が時空長であり、これを前項ではアーカイブに例えた。

.追 補:
(1)『広辞苑』により下記を追補する。
【様相】(modality)
@有様。状態。「深刻な―を呈する」
A〔哲〕可能的であるか、現実的であるか、必然的であるかという見地から見た事物のあり方。カントは判断をこの見地から蓋然的・実然的・必然的に分け、その根底にある思考形式として可能性・現実性・必然性という様相の範疇を考えた。
【様相論理学】(modallogic)
可能性・必然性・蓋然性などの様相概念を扱う論理学。萌芽はアリストテレスに見られるが、現代ではアメリカの哲学者ルイス(C. I. Lewis1883〜1964)が記号論理学の立場から形式化を行い、クリプキ(S. A. Kripke1940〜)が可能世界意味論を導入し、発展。
(2)これに関連する説明を加える。ここでいう様相は「時間」の下位「範疇」に相当し、日常用語化しているモード(mode)の抽象名詞である。三者は時制/時相(tense)として知られる過去・現在・未来に対応する。現実的とは現在的を意味する。刮目すべきは、思想や情報が行為を通して現実化できる時相は現在のみで、過去や未来は脳や記録にあるだけでそのためのストックに過ぎない点である。

5.参考資料
(1) 『哲学事典』 林 達夫ほか監修 平凡社 p1128
(2) 『岩波哲学・思想事典』 廣松 渉ほか編 岩波書店 p249
(3) 超解読! はじめてのカント 『純粋理性批判』 竹田 青嗣 講談社現代新書 2099 p27
(4) 『数学基礎論』 隈部 正博 放送大学教育振興会 p82