電脳経済学v6> f用語集> drd デリダ (v6) (当初作成:2010/09/28)

1.梗 概:
(1)ジャック・デリダ(Jacques Derrida: 1930.7.15-2004.10.8)
(2)脱構築 (deconstruction)
(3)二項対立 (oppositions)
(4)法と正義

2.論点整理:
(1)ジャック・デリダはアルジェリア出身のユダヤ系フランス人哲学者である。彼は脱構築の概念により広く知られポストモダンを代表する一人としてその影響は現代哲学のみならず多方面にわたる。しかしここでは論点を本サイトに関連する文脈に絞り込む。
(2) 脱構築とは(3)二項対立の孕む矛盾を克服する思考法を指し、その狙いは次のようになる。[大学]に「日々新た」の教えがある。つまり、哲学の営為は古い構造を破壊し新たな構造を構築してゆくことにある。脱構築の連鎖を通して脱構築の意味を獲得してゆく、脱構築の本義はここにある。このような教えは東洋思想では随所に現れるが一方の西欧社会では絶対性や普遍性を追求するが故に専ら哲学の領域となる。
(3)二項対立とは「真/偽」「善/悪」「美/醜」「有/無」「是/非」「実/空」「精神/物質」「内部/外部」「自我/他我」「西洋/東洋」「男性/女性」などの対義語あるいは対応概念において前項が後項に対して優位にあり内実において序列関係が認められるとする主張を指す。さらに後項が前項の前提をなすとする文脈から「差延」の概念が導出される。これはさらに「ロゴス中心主義」[音声中心主義」「男根中心主義」「ヨーロッパ中心主義」「現前の形而上学」へと繋がってゆきついには次の正義に結びつく。
(4)「法と正義」は脱構築と次の関係にある。法は脱構築の対象となるが正義はならない。より具体的に言えば法は脱構築可能であるが正義は脱構築不可能である。その理由は法はマクロ概念であり正義はミクロ概念だからである。つまり法は普遍妥当性が求められるが正義は個別の価値観や歴史認識に依存し誰も強要できない。この正義によらない限り法の脱構築は不可能である。両者の一致は意思疎通によるほかないが活発な相互参照や議論交流によって正義を巡る合意に達するだろうか。脱構築とはこのような意識浸透過程的な問題提起に相当し、これは民主主義の根幹にかかわりかつ現代社会のあり方を決定づける。

3.結語として:
デリダをどのように理解するか、その解釈は自由である。筆者はデリタの出口は複雑系の入口ではと理解している。複雑系が完結した体系とは思わないが少なくともカオス理論の予備知識程度は求められる。かくしてデリタが告げる「ウィウィ」つまり「万物肯定」が結語となる。

4.参考資料:
(1) ジャック・デリダ (Wikipedia)
(2) te哲学用語集
(3) 『岩波哲学・思想事典』 廣松 渉ほか編 岩波書店 1998/03/18
(4) 『デリダ』 脱構築と正義  高橋 哲哉 講談社学術文庫 2015年05月09日
(5) 『デリダから道元へ−「脱構築」と「心身脱落」 森本 和夫 ちくま学芸文庫 1999/08/10