電脳経済学v3> f用語集> ha1 廃熱 (useless heat): mi1 水循環(water cycle; hydrological circulation): ryu 流域水管理(basin water management) : ba1 バイオリージョン/バイオリージョナリズム(bio-region/bio-regionalism)
(一部追加:2006年08月28日)

1.廃熱とその処理過程としての水循環
廃熱とは廃物の分解過程で発生する利用不可能な状態の熱エネルギーをいう。仕事をする能力(有効エネルギー)がなくなったエネルギーの最終形態(無効エネルギー)を指し、しばしばエントロピーと同義に用いられる。つまり、廃熱、利用不可能な熱エネルギー、最終形態のエネルギー、仕事をする能力がなくなったエネルギー、無効エネルギー、エントロピーなどは日常語ではと呼ばれる。廃熱は水循環過程を通して最終的には赤外線放射として宇宙空間に放出される。地球熱機関の考え方によれば水は熱の担体つまり作用物質として地球表面から宇宙空間への熱移動を媒介するとともに物質循環の理想的なあり方を示している。地球環境問題/生命系の文脈を踏まえたエントロピー処理過程としての水循環系の位置づけを図ha1-1に示す。

エントロピー処理過程における水循環の役割と地球環境問題の関連性

図ha1-1 地球環境問題/生命系の文脈を踏まえた水循環系の位置づけ


2.水循環系とエアコンの仕組みの類似性

図ha1-1に示す水循環系の身近な事例として冷房用エアコンを挙げることができる。水かフロンかの作用物質(冷媒)の違いを別とすれば両者の仕組みは完全に一致している。冷媒の流れを逆行運伝すれば暖房となりこの場合は通常ヒートポンプと呼ばれる。ここで室内温度は地球表面温度300Kに対応しこの考え方の詳細はエネルギー代謝並びに地球熱機関に示す通りである。
(2006年08月28日追加分)

3.水循環と流域水管理
図ha1-1
に示す水循環過程を流域レベルで表現すれば図ha1-2の通りとなる。ちなみに、水循環、水文循環、water cycle, hydrologic cycle, hydrological circulation などはすべて同じ意味である。図ha1-1のコンセプトを特定地表面の水収支に限定する場合は流域水管理と呼ばれる。生物系は水を媒体として成立するのでこのような自然的地域区分/思想はバイオリージョン/バイオリージョナリズムと呼ばれる。この水収支計算はGIS応用ソフトとして地球規模での汎用化が進められている。図ha1-2は流出解析用のArcGISの事例であるがDHIなどではGISに準拠した洪水解析、水質管理、灌漑必要水量の算定など目的別の応用ソフトが開発・頒布されている。(2006年08月28日追加分)

 
Hydrologic Cycle-the circulation of the waters of the earth
Fig. ha1-2 Hydrologic Cycle-the circulation of the waters of the earth
(Cited from the "ArcHydro" D.R.Maidment p16)
 


4.水循環系の構図
図ha1-2を地球規模で数値として示せば図ha1-3となる。注目すべきは二重枠で囲んだ移流(advection) 41TCM (trillion cubic meter)が海面蒸発量の約9%に相当する点である。この移流は流出と量的に均衡しこれが崩れれば水循環系の定常性は確保できない。つまり開発により流出が減少すれば海洋からの移流もまた減少して陸地の乾燥化が加速する。この現象は黄河やナイル川の流域ですでに深刻化している。なお図ha1-3の数値は出所により幅がありあくまで参考値である。(2006年08月28日追加分)

図ha1-3 水循環系の構図 
出所:「水文・水資源ハンドブック」p44 朝倉書店