電脳経済学v3> f用語集> shi4 審級性 (当初作成日:2006年07月09日)

<1>重要さの順序に応じて取り扱いを区分すること。(日常用語)
<2>裁判所間の審判の順序・上下の関係を示す語。(裁判用語)

[説明]
(1)広辞苑によれば、「審級」とは訴訟事件を異なる階級の裁判所に反覆審判させる場合の裁判所間の審判の順序・上下の関係を示す語で、日本では原則として三審級を採用していてこれを三審制度と呼ぶ、となる。しかし審級の用語は裁判制度に限らず価値を巡る判断基準の意味を込めて広く用いられる。
(2)スミスは『国富論』第1編労働第4章貨幣の末尾において使用価値と交換価値について水とダイヤモンドの事例を引用している。この事例は第5章価格の冒頭における一文“ その人が人間生活の必需品・便益品および娯楽品をどの程度に享受できるかに応じて富んでいたり貧しかったりする”[参考資料(1) pp146-150] に結びつく。価値と価格の関係は疑いもなく経済学の主要関心事である。価値に関しては価値一般を論じる価値哲学の視点並びに上記の経済学の視点がある。本論は価値の源泉を生命に求める立場から財は生命に対する審級性に対応して同心円状に区分される[a42-3(pdf) pp87-88]。限界効用概念や市場機構が価格を判断基準とするのに対して審級性の場合は危機管理を意識して緊急性や重要性が判断基準となる。
(3)審級性に関する結論は次のようになる。トルストイは『人生論』において「合理的活動とは自己の考察をその重要さの順にしたがって配列すること」としている。これは極めて科学的な表現であり経済のみならず人生万般にわたる真理と言える。

[参考資料]

(1) 『諸国民の富』(1) アダム・スミス著 大内 兵衛・松川 七郎訳 岩波文庫

(2) 『人生論』 トルストイ 中村 融訳 岩波文庫