電脳経済学v3> f用語集> shi1 システム  (system:系)  (追加改訂2004年0728日)(一部修正2004年12月10日)

shi1-1 システムの考え方
システム/系の用語は今日では日常用語化していますが電脳経済学では下記のように限定解釈してメリハリをつけています。これを要約すればシステムとは「関係性の文脈から捉えた特定の対象」を意味します。なおシステムの一般的な用語法は末尾のshi1-2システムの条件に箇条書きで示す通りです。なおシステムと系は前後の文脈により適宜使い分けますが実質的には同義です。

境界の設定

ステップ1: まず境界を設定する。
図shi1-1において灰色の背景は未定義領域を意味します。そこに赤色の閉曲線を描いて「境界」と呼びます。このことにより未定義領域は境界を介して内部と外部に二分されます。誰がそれをしたのか、足場はどこにあるのか、境界の材質は何か、などの6W2H的な前提条件の吟味はさしあたり問いません。ここでは境界という第一着の持つ意味の重大性を強調したいと思います。なお、境界の材質とは実線で描かれているか点線か色は薄いか、さらに大切な点は何を通すかなどを指します。

図shi1-1 境界の設定 
内部と外部の区分
ステップ2: システムとは内部を指す。
図shi1-2においてピンク色ハッチ部分は境界の内部に相当し、これをシステムの「範囲」あるいは暫定的に「システム」と呼びます。なぜ暫定かといえば内部構造が示されていないからです。内部を指定すれば同時に外部も成立しこれを「環境」と呼びます。ステップ2では、境界をはさんで内部をシステム/系、外部を環境と名づけます。ここで環境は無限に広がっています。しかし、これでは科学で取り扱うことができません。ここでは内部と外部が系と環境に対応する点を確認しておきます。
図shi1-2 内部と外部の区分
環境外部境界の定義
ステップ3: 環境の範囲を決める。
図shi1-3に示すように、システムに環境が対応すれば、環境にも「環境の環境」が対応すべきです。言い換えると、環境の外側に境界を定めない限り、環境の範囲は指定できません。これでシステムと環境の範囲が指定できました。ところで、環境の環境とは便宜的な表現で、これは未定義領域あるいは背景と呼ぶべきです。ここでの要点は、環境の範囲がシステムとの関係から定まる点で、この文脈から環境の外側に境界を設定する作業は意味深長といえます。環境問題を巡る混乱は系と環境の関係が未定義だからです。環境問題でいう系は暗黙に生命系を指します。b40 環境と生態系
図shi1-3 環境外部境界の定義
外部関係の導入
ステップ4: 外部関係を導入する。
図shi1-4において外部関係を導入します。外部関係とは「投入」「産出」関係を意味します。入力・出力やインプット・アウトプットなどの呼び方もあります。この投入産出関係はシステムと環境を結びつけます。これでシステムをめぐる基本要素がすべてそろいました。枠組みを押さえれば内容的な定義は適宜に検証可能であります。ここで図shi1-4熱力学第1法則 dU=dQ+dW の異なる表現である点に注目します。つまり、ここでの関心は専らシステムの増減量に向けられ、投入や産出の経路は問いません。
図shi1-4 外部関係の導入
要素の構造
ステップ5: システム要素の構造。
図shi1-5はシステムの構成「要素」が構造を持つ点を表現しています。システムの内容的な定義とはシステムの構造を意味します。つまりシステムは構成要素によって有機的に編成された構造を持ち、所期の目的を達成します。システムとは通常この内部構造を指す総称であります。内部から外部への展開を外展開、逆に外部から内部への展開を内展開と呼びます。この文脈を踏まえて電脳経済学ではシステムの出入口に着目しています。自動車と部品の関係に例えることができます。
図shi1-5 要素の構造
ブラックボックスシステム
ステップ6: ブラックボックスシステム。
図shi1-6「ブラックボックスシステム」を表します。これは暗箱系とも呼ばれます。数学用語でいう未知数 X に相当します。未知数は既知数から誘導されます。さきに内容的な定義はさておいてとか内部構造はひとまず問わずにとしましたが、これがブラックボックスの考え方です。つまり投入産出関係から探り出す接近方法であります。例えば、TVのユーザは内部構造を知らなくてもその機能は引き出すことができます。熱力学第1法則における内部エネルギーはブラックボックス思考の典型的な事例です。
図shi1-6 ブラックボックスシステム
階層関係
ステップ7: 階層関係から整理する。
図shi1-7「階層」関係を直列的に図示しています。階層は「入れ子」とも呼ばれます。システムを中心にして下位系をサブシステム、上位系をスーパーシステムと呼ぶ場合もあります。ここではそれぞれ要素および環境としています。階層関係の考え方は会社組織などを思い浮かべれば容易に理解できます。図の表現が煩雑になるので図shi1-7では投入産出関係並びに並列的な関係は表示していません。内展開および外展開は階層関係を一般化した表現法であります。
図shi1-7 階層関係
代謝モデルによる経済系
ステップ8: 代謝モデルによる経済系。
図shi1-8代謝モデルによる経済系の事例を示します。システムの考え方は真偽を問うというより、問題の所在を明確にするための便宜的な方法であります。この図でグリッドで示した範囲は現行経済モデル(市場経済の仕組み)に相当します。経済系の上位系は生命系ではないか、資源とは自然と同義か、分解系は地球系に属するのでは、資本の取り扱いは、消費系の出入口は、などの問題提起が一目瞭然となります。的確な意思伝達にはシステム思考や作図は必須条件で数量化は次の段階になります。
図shi1-8 代謝モデルによる経済系

shi1-2 システムの条件
目的性を備えた構造体を指し情報に基づく制御作用により機能する。システムが備えるべき条件は下記の通りである。

1.システムには「目的」がある。
2.システムは「境界」によって外部と区分される。
3.境界の外部をシステムの「環境」という。 
4.境界の内部をシステムの「範囲」という。
5.システムは「要素」よって構成される。
6.範囲と要素は相互関係によって成立し、範囲から要素を規定する方法と要素から範囲を規定する方法がある。
7.システムは「構造」を持つ。構造とは、範囲と要素の関係並びに要素間の関係を指す。
8.システムと環境の間は「投入」並びに「産出」によって結ばれている。
9.システムの内部には投入から産出に向けての「流れ」がある。
10.システムには産出から投入を制御する「フィードバック」並びに投入から産出を制御する「フィードフォワード」の「機能」がある。
11.システムが目的に則して機能しているかどうかを検証する「評価」がなされる。
12.システムには、「意志」が働いている。それはシステムを設計し作成する意志と運用する意志に区分できる。評価は両者を結合する。
13.システムにおける意志の存在ないし属性は意味深長である。