電脳経済学v3> f用語集> ka52 可塑性 (melleability) (当初作成:2006年07月09日) (一部修正:2006年07月24日)

(1) 可塑性(かそせい)(malleability) は可変性とも呼ばれ基本的に物理用語である。まず可鍛性、弾性、脆性、粘性などとの違いを的確に把握する必要がある。つぎに経済用語としての原義は次の通りである。ある生産要素が特定の用途に固定されることなく、そのときどきの条件に対応して一つの用途から他の用途に自由に転用することが可能であって、そのためにとくに費用をかけることもなく、また時間も必要としない程度を指す[下記の参考資料(1) p80] 。生産期間の瞬時性[d45 図d45(1)]が可塑性仮定の代表例であるがその非現実性は自明である。
(2) 上記を踏まえて本論では可塑性を変形容易度あるいは流動性程度を表す概念とする。つまり財を各種の用途に振り向ける場合に費用や時間を必要としない程度とは加工や移動のためのエネルギー単価が安いことを意味する[a42-3(pdf) pp86-88]。物財としての水は岩石に比較して可塑性が大きい。この文脈から現金や電子マネーは可塑性極大の財となる。一方、土地に代表される自然環境や地縁的な公共事業は可塑性極小の例である。結論的いえば農業−工業−情報の順序で可塑性大となり他方で審級性小となる。経済規模が自給自足経済から地域経済へさらには国家経済から地球経済(One Planet Economy)へと進展する状況は、この可塑性と審級性の援用により首尾一貫した説明ができる。これは食料問題ではフードマイレッジとなり一般的には輸送問題と呼ばれ、さらに普遍化すれば物理要素の働きの文脈に収まる。
(3) 経済資源の地域的な偏在を エコロジカル・フットプリントでは土地と人口の分布に還元して1人当たり面積として記述している。つまり土地から人口へのソース経路を総供給面積で表現し、他方の人口から土地へのシンク経路を総需要面積で表現している。さらに持続可能性指標を総需要面積/総供給面積で数値化してオーバーシュートと呼んでいる。ここで物財の輸送費用は可塑性の逆数となる。可塑性の考え方はbulkyな石炭とガスパイプラインを対比すれば容易に理解できる。
(4) 可塑性につては [a42-3(pdf) pp86-88]に加えてコメント10コメント17c30市場経済の仕組みshi3資本理論の展開でも取り扱っている。

[参考資料]

(1) 『経済学の考え方』 宇沢弘文 岩波新書