電脳経済学v6>b自然系> b45 生態系と経済系の対応関係
(当初作成:2009年03月20日)

b45生態系と経済系の対応関係

図b45 生態系と経済系の対応関係


b45-1 生態系から経済系への経路
提案経済系/代謝モデル構想への接近経路は幾つかありますが次に生態系から経済系への経路についてその要諦を示します。環境と生態系/食物連鎖過程に示す炭素循環過程と経済系における物質/情報循環過程の対比から図b45生態系と経済系の対応関係が得られます。図b45はEcologyとEconomyの関係を端的に表現するとともに次の点を告げています。

生態系と経済系の対応関係要目:
(1) 地球生態系のもとで人間もまた動物界の一員である。
(2) ただし人間は経済という生活様式により生存を獲得している。
(3) 経済系は生態系の内部系として定式化可能である。
(4) 生態系並びに経済系はともに物質循環が成立根拠となる。
(5) 子なる経済系は親なる生態系と相似的入れ子関係をなす。
(6) この場合に両者は存在と認識の関係にある。
(7) 親なる生態系を巡る人間の知見は今日なお限定されている。
(8) 環境問題は上記文脈からの乖離を知らせる警告である。
(9) 経済系の目的は自然との共存に基づく人間の解放にある。

b45-2 対象系を巡る投入産出関係
図b45を巡る投入産出関係は物質循環並びにエネルギー代謝に着目すれば表b45対象系を巡る投入産出関係対比表のように整理できます。生態系に対する投入産出関係については図b40に無機的環境として概念図を示しています。なお表b45の生態系は経済系との対比のために作成したものでここでは内容的な厳密性は問いません。経済系にかかる投入産出要素は経済要素ともいいます。

表b45 対象系を巡る投入産出関係対比表

生態系(食物連鎖過程)

経 済 系

各系

投入

産出

各系

投入

産出

植物

 

@太陽光*
@無機物+
B二酸化炭素
B水分

A有機物+
C酸素
C熱*、水

生産

@資源+#
B労働#

A商品+#
C廃物+

動物

 

@有機物+
B酸素
B水分

A有機体+
C二酸化炭素
C熱*、水
C運動

消費

@商品+#
B家事労働#

A労働#
C廃物+
E文化*

微生物

 

@有機遺体+
B酸素
B水分

A無機物+
C二酸化炭素
C熱*、水

分解

@太陽光*
@廃物+
B労働#

A資源+#
C廃熱*

注1:*は対象系外とのエネルギー/情報代謝、+は対象系内の主要な物質循環、#は対象系内の主要な情報循環。
注2:生態系における物質循環は基本的に無機物の有機化とその高次化過程並びに遺伝情報の継承過程として説明可能。
注3:囲み番号は両系投入産出の対応関係を示す。栄養循環を巡る機序が両系を結ぶ鍵概念となる。

ここで生態系は食物連鎖過程と同義であり、食物連鎖過程はまた炭素循環過程あるいは窒素循環過程とも呼ばれます。これは生物界を巡る物質循環を意味しこれにはエネルギー代謝が必須となります。これを俯瞰すれば太陽エネルギーの分配機構といえます。この文脈を踏まえて経済系に対しても物質循環並びにエネルギー代謝に準拠して生産−消費−分解からなる各系に対する経済要素の投入産出関係を対応させます。なお経済系/経済要素は生産要素からも導出できます。 進化や情報蓄積は物質循環並びにエネルギー代謝の帰結となります。なおこれらの前提をなすエントロピー処理の意味深長性は改めて繰り返すまでもありません。これら文脈を総括して物理要素の働きと呼びます。