電脳経済学v3> f用語集> ke1 経済 (economy) 当初作成2000年10月08日)(一部修正:2004年09月07日)(一部追加:2005年10月22日)(一部追加:2007年06月18日)(一部追加:2007年09月24日

1.定 義
<1>諸目的と代替的用途をもつ希少な諸手段との間の関係としての人間行動。(ライオネル・ロビンズによる希少性原理
<2>財やサービスの生産・分配・流通・消費に関するすべての働き。
<3>人間生活の維持・発展に必要な財・サービスの需要と供給に関する社会関係の総体
<4>資源配分と所得分配を巡る最適化問題。(サムエルソン経済学の立場)
<5>富の社会的再生産過程。(マルクス経済学の立場
<6>財の移転(売る、買う、貸す、借りる)に関する権利関係。
<7>ギリシア語のoikonomia(家政)に由来し、日本語では経国済民あるいは経世済民の略語
<8>系(システム)の環境に対する働きかけとその見返りの関係。(電脳経済学の立場)
<9>交換過程を基本とする社会関係。(電脳経済学の立場)
<10>交換に基づく人間固有の生活様式。(電脳経済学の立場)

2.説 明
(1)上記<1>はロンドン・スクール・オフ・エコノミクス大学ライオネル・ロビンズ教授による定義である。ロビンズは経済の意味空間を物質性、希少性、交換性に類別したうえで、希少性という根本原理からすべての経済問題が統一的に捕捉可能という結論に至った。<1>においてロビンズは、@目的、A手段、B選択の順序を経て人間行動が決定され経済学はこの文脈を研究する科学であるとした。さらなる詳細説明は末尾[参考文献]1.該当頁を参照されたい。ちなみに、この立場をさらに一般化/普遍化すれば電脳経済学の主要論点である目的論と方法論と同義となり、これは判断/命題あるいは最適化問題とも呼ばれる。

(2)上記<2><3>は古典的な定義である。何をもって日常用語とするかは別として、専門用語の定義は日常用語による説明を原則とする。この意味で上記<4><5>もかなりの予備知識を前提としている。上記<6>は日常用語による説明の身近な例として不動産広告のコピーを挙げた。上記<7>は言葉の由来の説明で内容の説明ではない。

(3)上記<8>は一般化した定義である。つまり各種現象を可及的に共通の言葉で表現する立場である。例えば系(システム)という日常用語から出発して、経済の仕組みが解明された後に変換系としての経済主体に家計・企業・政府の名称や位置づけが与えられる。つまり後者は結果であり前提ではない。
英語でgive and take というが、経済とは基本的にこの与えて取るという対応関係を巡る評価態度を指す。短くいえば損得感覚である。この系に対する出入り関係は、熱力学第1法則のところで投入産出関係と呼んでいる。多様な表現形式があるとしても、ある主体が他者に犠牲を払い、後に見返りを受け取る。経済とはこの自他を巡る関係性の評価態度を指している。換言すれば主体を中心とする因果関係である。
先代の徳であの店は繁盛している、という。ちなみに徳とは予見能力を意味する。これを社会に拡張すれば道徳となる。社会道徳を因果律の文脈から経済学として再構築したのがアダム・スミスである。スミスはそれを「神の見えざる手」と呼んで社会編成の機序を描き出した。ここで道徳と経済の顕著な差異は貨幣を媒介とするか否かにある。つまり貨幣が因果律の数量化を可能にした。蛇足ながら、道徳・経済・情報の相互間に正の相関があることは自明であろう。

(4)上記<9>の説明は次のようになる。因果律のもっとも単純明快な形態は1対1の瞬時的な交換である。貨幣を媒介とする交換過程については交換モデルで詳述している。電脳経済学の際立った特徴は、経済過程の全局面が交換モデルのみで説明可能とする点にある。つまり代謝モデル交換モデルのみに還元でき、アダム・スミスのいう交換性向の内実は情報交換にほかならない。

(5)上記<10>は電脳経済学に特有の主張で人類学交換性向を組み合わせた経済人類学の立場を「経済行為を人間固有の生活様式」として簡潔に表現している。言外に経済に拠らずして人間は生存を確保できない事実並びに再結合への方向性を示唆する。

(6)上述の論点は次のように整理できる。つまり経済の目的は物質的な豊かさというより精神的な豊かさにあり、これはハードからソフトへの意識改革と呼ぶことができる。
@経済とは交換による商品の獲得行為を指す。A交換は貨幣を媒介とする。B貨幣は情報の担体である。C情報は最終的に人間の意識に流れ込む。D意識の拡大は人間の解放を意味する。Eつまり経済の目的は人間の解放にある。Fちなみに解放と自由は同義である。

[参考文献]
1.『経済学のコスモロジー』 永安幸正 新評論 1991年4月30日発行 pp58-62
2.『経済学第一歩』 小泉進 岩波書店 1987年9月22日 pp3-5
3.『経済学の考え方』 宇沢弘文 岩波新書 1989年2月10日 pp5-13