電脳経済学v3>b自然系> b50 熱交換器の原理
(一修正:2004年07月17日) (一修正:2009年06月01日)

熱交換器の原理

変換系の基本形式

図b50-1 熱交換器の原理

図b50-2 変換系の基本形式


b50-1 「熱交換器の原理」から出発する
ガス湯沸かし器に代表される熱交換器の内部構造を図b50-1熱交換器の原理に示します。図b50-1において左側と右側の経路はそれぞれ空気と水の流れを示しています。ここで冷水は高熱から熱エネルギー(一般的には有用性)を受け取ることによって温水(有用物)に転じて産出されます。これと同時に熱を奪われた高熱は不可避的に低熱(無用物)に変じて排出されます。ここで注目すべきは、熱エネルギーとともに情報も移転される点にあります。(エネルギーと情報は本来的に一体である。有用性とは情報を持つと同義であり、同様に無用性は情報を失った状態を指す。)
電脳経済学あるいは代謝モデルは上記論点の敷衍に外なりません。したがって本ページ結論は《物理要素の交換が経済要素の変換に相当する》となります。これは原子と分子の関係に対比できます。

b50-2 「変換系の基本形式」として一般化する:
図b50-1熱交換器の原理を一般化すれば図b50-2変換系の基本形式のように表現できます。ここに変換系とは生産・消費・分解の各系の総称です。物理要素の交換を承認すれば経済要素の変換とその内実である価値集約は演繹的に説明可能になります。つまり図d10代謝モデルに明らかなように生産・消費・分解の各変換系はそれぞれ商品・労働・資源からなる経済要素の産出を目的とします。ここでエントロピー増大則並びに情報の属性が鍵概念を与えます。
エネルギーの無効化、物質の拡散、情報の散逸などの物理現象は、事物の一方的な低級化 として捉えることができます。この無秩序化程度を表わす物理量がエントロピーです。エントロピーは熱力学により定式化された物理量であるにも拘らず現象世界を説明可能にする普遍性を備えた概念です。しかし、その晦渋な概念故に敬遠されたり比喩的な表現に留まりがちです。当面は汚れ、無用性、無秩序性、熱などの包括的概念と理解して必要に応じてフィードバックすればよいと考えます。
このように熱交換器に見られる単純な原理のうちに物質エネルギーエントロピー情報からなる物理要素の実体的性格とその交換・発生を巡る機序が示されています。上述の物理過程は、次の仮説のもとでそのまま経済過程に適用できます。なお変換系は変換モデルにより交換モデルとの対応関係からも説明できます。但し、この市場場面においては物理要素は後退し人間意識が前面に現れますが基本的な考え方は全く同じです。

【変換系に関する仮説】
(1)ある系への投入財は、系内部における情報とエントロピーの交換・発生を通して、有用財と無用財に組み替えられて産出財に転じる。この間における物質移動のためのエネルギー消費は不可欠であり、それに付随するエントロピーの発生もまた不可避である。
(2)経済要素の変換過程は物理要素の交換過程と等価関係にある。

b50-3 参考文献:
1. 中公新書774 『エントロピー入門』 地球・情報・社会への適用 杉本 大一郎 中央公論社 p12