電脳経済学v3> c経済系1> c70 市場経済からの展開
(当初作成:2006年10月23日 )(一部修正:2006年10月25日 )(一部修正:2006年11月01日 )

図c70 市場経済からの展開(代謝モデルの原型)


c70-1 プロローグ
1972年に韓国の世界銀行プロジェクトで始めてIBM1130/FORTRANを使って水文計算を行いました。プログラムより長文のエラーメッセージが打ち出されてショックを受けた記憶があります。ところがマニュアルを参照して数行のSyntax Error を修正しただけで期待通りの計算結果が得られました。Syntaxは統語法と訳されますが構文上のあるいは論理的なを意味します。これは大本を正せばそれに関連するエラーは付随して修正されることを告げています。この大局を押える考え方は物理学では摂動論と呼ばれます。
同じことがc30市場経済の仕組みについても言えます。c30-2e10並びにe12において列挙した現行経済系を巡る問題点はc30-2(b)/C.(13)に示すようにその大半が生産要素の捉え方に起因すると考えられます。上記の文脈を踏まえて次に生産要素の見直しを通してc30市場経済の仕組み自体からd10代謝モデルへの展開を示します。

c70-2 生産要素の見直し
図c30における「生産要素」は土地・労働・資本の3枚のカードが重なる姿とみなします。まず生産を中心点として土地カードを180°回転すると図c70の左半分を得ます。この場合に土地は資源と読み替えかつ負の商品として廃物を考えます。さらに物財シンクとしての消費に対応して物財ソースとしての分解を導入します。分解はまた負財廃物のシンクでもあります。こうして2枚目の労働カードが同図の右側に現れます。3枚目の資本カードはストックなるが故に長期時間軸としてカード背面に垂直方向にとりここでは考慮しません。
上記の手順を踏んで図c70に示す代謝モデルの原型が導出できます。同図では煩雑さを避けるために系外との関係並びに労働や廃物からの補助的な経路は割愛しています。もし必要ならばb52を参照願います。図c70を整理すれば次のことが言えます。
(1)図c70においてはそれぞれ情報循環と物質循環を表しこれらは代謝モデルの象限番号に対応しています。
(2)中央部を占める「生産」を巡る資源・商品・労働・廃物の各市場は交換モデルによって内部機構が示されます。
(3)同様に生産・消費・分解の各系は変換モデルによって内部機構が示されます。
(4)図c70に示す各系の背景色はそれぞれの影響圏を表します。例えば緑色で覆われる生産系は企業を経済主体として各市場にかかわり経済過程の中心的な位置を占めます。
(5)図c70から明らかなように政府の第一義的な役割りは資源供給にあります。したがって有限な物的資源は最終場面では政府による公的管理となります。
(6)なお図c70において物財は反時計回り、貨幣は時計回りで物財に逆行を原則とします。しかし廃物は負財ですから例外的に貨幣は物財に順行します。つまり廃物市場における負の貨幣需要とは政府による課税を意味し、これは同時に資源の有効利用を促す誘因となります。この場合も炭酸ガス排出権と同様に市場/取引が成立します。

c70-3 エピローグ
(1)市場経済の仕組みは現行経済系の基本枠組みを表す。
(2)市場経済の仕組みにおける生産要素の捉え方は経済問題群の根本要因である。
(3)生産要素の捉え方を見直せば市場経済の仕組みから代謝モデルへ直截に展開できる。
(4)代謝モデルC協議経済(仮称)に基本枠組みを与える。
(5)生命系の考え方代謝モデルに基本理念を与える。