電脳経済学v3> f用語集> bu3 文化 (culture: for reference) (当初作成:2007年05月15日)全面改訂:2007年06月18日)一部修正:2007年06月22日)

1.定義事例
(1)文化の原義は”土地を耕す”cultivate に由来し、ここから wild や unexplored が対照語となる。
(2)人間が長年にわたって形成してきた習慣や振舞いの体系。(ウィキペディア
(3)人間が自然に手を加えて形成してきた物心両面の成果。(広辞苑から一部引用)
(4)衣食住をはじめ技術・学問・芸術・道徳・宗教・政治など生活形成の様式と内容を指す。(広辞苑から一部引用)
(5)文明とほぼ同義に用いられることが多いが、西洋では人間の精神的生活にかかわるものを文化と呼び、技術的発展のニュアンスが強い文明と区別する。(広辞苑から一部引用)
(6)世の中が開けて生活が便利になること。文明開化と同義。(広辞苑から一部引用)
(7)経済系に対して低次情報を入力し高次情報を出力する多義的な情報源。(電脳経済学の主張:「 図d10代謝モデル」右下参照
(8)社会進化の文脈を踏まえた情報蓄積の体系化された全体像。(電脳経済学の主張)

2.熟語としての文化
文化は文化遺産、文化革命、文化勲章、文化功労者、文化国家、文化祭、文化財、文化住宅、文化人類学、文化生活、文化庁、文化の日、カルチャーギャップ、カルチャーショック、カルチャーセンターなど熟語として多用される。これらの抽象化を通して文化の概念を掴むことが出来る。ちなみに「土地」の場合も熟語として多用される[2.A.(7)]が用語の定義自体は蔑ろにされている。

3.文化を巡る説明
3-1 人類学に遡る
他の動物一般と比較するとき人類は自然的・形質的特徴(physical features)がより少ない点にその特質を見出すことが出来る。これを具体例で述べれば野性動物は厚い毛皮や強い牙などによって自然に適応しかつ外敵から身を守っている。一方、人間はこのような外見的な特徴は認められないが、それに代わる『知性』に依拠して生存を確保している。「知性人」あるいは「工作人」などと呼ばれるように人間は『大脳新皮質』を介して環境に適応し生活を維持している。つまり人間は外界と身体の間に『大脳新皮質』というバッファー(buffer)を介在させ、これを外部化した文化を共有することによって人間たり得ている。
文化を共有する意味で社会は第二の自然と呼ばれる。この文脈はミクロ視点では「存在と認識」とも通底している。存在と認識の日常的な不一致は人間性の矛盾が不可避との論拠ともなる。人類学は通常自然人類学と文化人類学に区分されるが、むしろ自然人類学を前提に文化人類学が成立している。したがって文化は人類進化と社会進化の整合性文脈を踏まえたうえで再定義される必要がある。
3-2 電脳経済学との絡み
つまり文化とは人間の大脳の働きによって獲得された生活様式の成果全般を指す。生活様式の成果全般とは生態的、社会経済的、政治的、宗教的あるいはその他要因を意味する。特記すべきは電脳経済学の主張が「経済を人間固有の生活様式」とし「文化を経済の累積的成果」とする点にある。人間が経済に依存する姿は蚕が桑の葉に依存する姿と生活様式の面で共通している。しかし人間は自身の文化的進展速度についていけず失速状態に陥っている。
3-3 文化の捉え方
上記のように文化の概念は極めて多義的であり含意の特定に困難を伴うので前後の文脈に細心の注意を要する。あえてこれを示せば前記の1.定義事例のように整理出来よう。
定義事例(2)(3)は文化の形成過程に着目した『時間的な捉え方』である。ここで文化の原義が”土地を耕す”cultivate に由来する点は暗示的である。ここで次の関係が成立する: 

  1. 土地(本源的生産要素)+労働(本源的生産要素)⇒資本(生産された生産要素
  2. 資本(低次資本高度化された労働⇒高度化された資本(高次資本

上記 2. は定義事例(7)(8)の論拠を示す。要諦は「高度化された労働の入力なしに高度化された資本は成立しない」点にある。つまり情報蓄積の文脈において資本の高度化、価値増殖、文化の進展、社会進化などは同義といえる。ちなみに生命系の経済を踏まえてこれらは経済社会の進展過程として例示出来る。
定義事例(4)は文化の内容を示す『空間的な捉え方』と言える。文化はすぐれて地縁的な概念で場所固有性あるいは非代替性を特徴とする。自明の事実として”土地を耕す”とは
農村・農業の営みそのものである。つまり、農村・農業的な文化が外部に向けて流れ出て、その混合(merging)の成果として文明が発生する。この文脈において文明civilizationは都市urbanに対応し、それは地球レベルでの普遍性を備えている。文化と文明はともに自然と反立の関係にある。文化と文明はまた使用価値と交換価値に対応し、両者は成分的に垂直と水平あるいは時間と空間の関係をなす。人間は自然の一部であるが文化と自然は反立関係にある。文化を巡るこの矛盾命題は人間の再定義を要請しこれはまた哲学の再点検を指している。

4.参考資料

(1) 文化 (Wikipedia)

(2) 文明 (Wikipedia)

(3) 土地 (Wikipedia)