電脳経済学v8> f用語集> ke4見当識 (orientation)  (当初作成:2004/12/26)(一部追加1.〈4〉:2017/01/19)

1.梗 概
<1> 時間と場所およびこれに関連して周囲を正しく認識する機能。心理学用語で指南力とも言う。
<2>現在の自分自身を時間的、空間的また社会的文脈のなかで定位する心身機能。
<3> 今自身が置かれている立場や周囲の状況を的確に認識できる能力。立ち位置を巡る判断能力。
<4> 脳科学を巡る知見と関連して@脳内GPS、Aミラーニューロンを挙げる。説明は2.(5)参照。(追加: 2017/01/19)

2.説 明
(1)見当識はもともと発達心理学の専門用語であるが、近年ではむしろ介護用語として用いられている。このことはウェブサイト検索で容易に確認できる。見当識の能力に障害がある場合に見当識障害、見当障害者あるいは失見当などという。痴呆(差別用語との理由で認知症に変更予定:しかしこれでは障害を表さないので意味不明確との意見も多い。)、意識障害、記憶障害、妄想幻覚、精神分裂病などの場合は見当識が広範囲に障害されることが多い。局所的な脳障害によって特定の対象に関する見当識のみが選択的に障害される場合は@場所の失見当 A時間の失見当 B人の失見当などという。”わだかまり”はその原因であり結果でもある。
(2)見当識作用は知覚、注意力、記憶、知能、思考などの複雑な心的機能が統合された結果として発揮される。自分(自己の見当識)がいま(時間の見当識)どこにいて(場所の見当識)周囲の人や状況のなかで(状況の見当識)何をすべきかという判断は健常者にとっても思考の根本形式であり人格形成の本質に深くかかわっている。
(3)見当識に関連する電脳経済学の見解はb34 2.(2)時空論並びにWH疑問文(6W2H)に示す通りである。人間の加齢過程が累積的な意識拡大化(e24-2)に向うのかあるいは正規分布的(2-1-1ライフサイクルのレイアウト:図参照)な退行回帰化を辿るのかは一般化できない個人的な問題であろう。ちなみに電脳経済学は前者を支持しているが見当識概念は後者を前提としている。
(4)経済学用語に心理学用語が現れるのは唐突との印象を与えるが、見当識を急遽追加した理由は地理情報システム(Geographical Information System: GIS)との関連からである。電脳経済学は上記(3)にもあるように基本的に「時空論」に準拠している。情報量の90%は空間に関連する情報とされるが、それは空間情報が人間の視覚認識に直結するからである。一方、エントロピー増大則では時間は空間の状態変化として捉えられる。主体/主題は時間と空間を結合する座標軸として要請される。蛇足ながら認識はこの三者の統合化過程を意味しその完結状態において意識は消滅する。逆にいえば意識は未統合状態において現れる錯覚現象といえる。この文脈を押し広げると社会関係、政治外交、歴史認識、集計問題、健康管理、宇宙科学などすべては空間連鎖に還元できる。GISの可能性をさらに広い視野から捉える立場は空間情報科学(Spatial Information Science: SIS)あるいはデジタルアース構想と呼ばれる。
(5)脳科学を巡る知見との関連は次の通り。@脳内GPSに関しては下記3.参考文献 (3)-(5) を参照。Aミラーニューロンに関しては下記3.参考文献 (6)-(8) を参照。Wikipediaから抜粋すると、ミラーニューロンとは「霊長類などの高等動物の脳内で、自ら行動する時と、他の個体が行動するのを見ている状態の、両方で活動電位を発生させる神経細胞である。他の個体の行動を見て、まるで自身が同じ行動をとっているかのように”鏡”のような反応をすることから名付けられた。他人がしていることを見て、我がことのように感じる共感能力を司っていると考えられている。……」 
つまり、ミラーニューロンは模倣、学習、言語、認知、共感などと深く関連する。とりわけ認知障害や心理機序の文脈から注目されている。追加して取り上げた理由はAI、深層心理、qut量子論などとの絡みからである。結局、「脳とコンピュータ」や「身体とロボット」などの対応関係は「生命体と非生命体」との”鏡”関係に敷衍出来、更には進化や教育といったテーマも同じ文脈となり、その最果てがzhu荘子では…。(追加: 2017/01/19)
(6)気になったので付け加える。ap人間原理が要請されるのはミラーニューロンによる人間の脳内と脳外(bdt身体論的内外関係)の対応付けによる。量子力学における観測問題とは将にこの内外関係を指している。(Twitter参照|ログ速:量子力学ってつきつめれば人間原理?) 人間の対応概念としてcsm宇宙があり、調和宇宙と普遍宇宙、人治主義と法治主義の関係も同様である。詳細はdrdデリタ(脱構築、二項対立)に示す通りである。要諦は前項が後項に優越すべき点にある。(追加: 2017/01/23: 2017/01/29)

3.参考文献:
(1) 『発達心理学辞典』 ミネルヴァ書房
(2) 『新版心理学事典』 平凡社
(3) 『日経サイエンス』2016年6月号 特集:生物のGPS 《脳内GPS》 (追加: 2016/05/21)
(4) 脳内GPSとは 研究用語辞典 研究.net (追加: 2016/05/25)

(5) 脳の中にはGPSがある WIRED NEWS 2013.8.29. (追加: 2017/01/19)
(6) ミラーニューロン (Wikipedia) (追加: 2017/01/19)
(6)-2 共感 (Wikipedia) (「荘子の考えた共感」並びに「共感の欠如」の項に着目)(追加: 2018/06/02)
(7) ミラーニューロンを使って自動的に理想的な自分になる方法 (追加: 2017/01/19)
(8) 「ミラーニューロン」は何の役に立つのか? WIRED NEWS 2014.7.29. (追加: 2017/01/19)